MMRと自閉症の真実(8)
ウォーカースミス、ウェイクフィールドとLancet論文の裏にある本当の話
「Something New Was Coming」:ウォーカースミス、ウェイクフィールドとLancet論文の裏にある本当の話
ダン・オムステッド
今やジョン・ウォーカースミス教授に対して英国医学総会議(GMC)から提起された嫌疑が晴れたので - 判事はこのようなこじつけは二度とすべきでないと勧告した - 彼の証言は重要なものと言える。
真 実
ウォーカースミスは、厳しい訴追に対してただ自己弁護する証人だった時、12歳の子供をどう扱ったかについて何日も証言した。
その子は1998年に発表されたLancet論文の症例のひとつとなった子供だった。彼は非常に詳しいところまで、子供がどのように彼のところに照会されてきたか、彼と同僚は何を発見したか、それに対して彼らは何をしようと決断したか、説明した。
つねにはっきりと、ゆっくり話すように要求されながら、ウォーカースミスは70代で引退してから長かったが、自分が子供をどう扱ったかを力強く自己弁護し、共著のLancet論文の正確性を弁護した。
彼の証言 – 今や医師免許を取り戻した誠実かつ経験豊な医師の証言として判事に認めた証言 – は、Lancet論文に対してでっち上げられた作り話の多くを覆した。そうした捏造はロンドンの新聞サンデータイムスのブライアン・ディアが最初に広め、次にBritish Medical Journalとその編集者、フィオナ・ゴッドリーが広めたが、共著者のアンドリュー・ウェイクフィールド博士を子供の病歴を自在に操れる権力者として持ち上げた。
ウェイクフィールドは、子供は連続して照会されたと間違った主張をしたために、以下のような作り話がそのまま通用してしまった。それは、彼は何でもないはずの子供の腸障害(ディアは「下痢」とあざけっていたが)を恐ろしい新疾病にしてしまった。
彼の主張では、子供達のほとんどはそうした診断を受けなかったが、その子供達には自閉性があったという、彼は自分の研究ニーズを満たすために侵襲的医療措置を指示した、そしてMMR注射のタイミングをごまかして、注射がその症状を引き起こした可能性があるように見せかけ、あるケースでは症状が出る前、まだふさわしくない時に注射を打った、といった話である。(ウォーカースミスが処置医でウェイクフィールドはデータを集める研究者であることが重要である。)
BMJが2010年1月に出したプレスリリースでの主張では、「編集者のゴッドリー博士は、BMJ副編集長のジェーン・スミス、有名な小児科医でBMJ共同編集者のハーベイ・マルコビッチとともに、『間違いなく』ウェイクフィールドこそこの詐欺をはたらいた者だ」と結論づけた。彼らは「彼の望む結果を達成するために、非常に多くの考えと努力を論文執筆に注ぎ込まなければならなかった。矛盾点はすべて一方向に向かい、誤報は全体に及んでいる」と述べた。(今年に入って、ウェイクフィールドはBMJ、ゴッドリーとディアを名誉毀損で訴えた。当誌は「作られた詐欺」シリーズでこの不正行為疑惑を扱っている)。
次に彼らが行ったのはウォーカースミス自身の言葉、滔々と自己弁護のため、論文の主張と主著者であるアンドリュー・ウェイクフィールドの正しさを証明するために証言した言葉を細かいところまでつつき回すことであった。
- 教授、貴方が書簡についての証言の中で用いていた言葉について再度お尋ねしたいのですが、それは「臨床上の必要性」です。この「臨床上の必要性」という言葉はどのような意味で使ったのですか?
- ええと、基本的に、子供の体調が悪くて、なぜ悪いのか答を知る必要がある、ということで、つまり、子供の検査を指示する必要がある、ということです。子供に胃腸の重い症状があって、特定の疾患を示す兆候がある場合は、どこが悪いのか発見しようとするわけです。子供が何かの病気と診断され、問題が継続している場合は、臨床上の必要性は適切な治療法を見つけることです。
- Lancet論文の子供12名に関してですが、 … 貴方の学部では何を基準に子供を検査したのですか?
- 私達はただ臨床上の必要性だけを基準に検査しました。子供には症状と兆候がありましたが、その原因が分かりませんでした。私達は一連の検査を実施して、何が問題になっているのか発見しようとしました。そこから出た検査結果は、従来の方法で出ました。私達は診断を行い、最終的にはどこを治療するのが正しいのか判断しました。…
この検査で非常に驚いたのは、異常を示す大きな証拠でした。クローン病(別のGI疾患)を疑いがある場合でも、… 異常の発生率はこれより低いものでした。ここでは検査した自閉症スペクトラム障害の子供50人のうち47人に粘膜異常が見られました(最初の12人がLancet論文に引用)。これは自閉症自体の症状と思われたが、子供達はみな腸疾患を抱えていた。
子供達はみな特に臨床的手法のみで検査しました。腸炎があるか、適切に治療できるかどうかた判断するためでした。…
- 貴方の証言と、それから実は文書から分かることですが、Lancetで報告された子供を貴方が診察したケースでは、彼らは従来のIBD(炎症性腸疾患)かもしれない、クローン病か潰瘍性大腸炎かもしれないという仮定から始めたのですか?
- 実のところ、そうでした。… 私の見立てでは、私の同僚もそうだったと思いましたが、最初は「クローン病かどうか」でした。聞いての通り、時間とともに事態は変わっていきました。
- 時間が経ってもクローン病が見つからなかったとき、目の前の状況や症状についてどう考えたのですか?クローン病でも潰瘍性大腸炎でもないとしたら、何だと思ったのですか?
- 今までの医師としての経験の中でも何度もあったが、新しい病気を発見した、… ここで見ているのは新しい症候群で、かなり明瞭な症状として下痢、腹痛を頻繁に起こす症状を伴うもので、他の医師は診たことがないものでした。時には、子供がしゃべらず、うめき声を上げるだけでそれ以外の徴候がはっきりしないことが原因の場合もあります。それが主な症状でした。その後、便秘、または便の詰まり、もしくは腸管の通過を妨げる何かといった方が適切かもしれないが、それも症状として見られた。特徴的な症状パターンがありました。
それから、ある意味もっと注目すべきは、組織病理学検査(顕微鏡検査)に共通する部分が非常に多かったことです。見つけにくい病状で、基本的な特徴としては、腸リンパ球過形成(膨張したリンパ節)があり、その大半は結腸リンパ球過形成で、それから固有層の炎症細胞の増加、それに陰窩炎の急性症状の形跡と時々膿瘍が形成されることがありました。これは大人の顕微鏡的大腸炎とそれほど違わないものでしたが、明らかに自閉症と関連している状態なので、何か今までにないものではないかと考え、もちろんそれが動機となって、アンディ・ウェイクフィールドに指導してもらい、これを論文で発表した方がよいと考えました。
- 組織学の報告書、組織学会議のレポートの集成を終えてみて、異常があったのは明らかだったのですか?
- はい。
- --- 何かを異常だと特定し、その理由を説明した?
- はい。
- でも、子供達は特に顔色は良くなかったと?
- はい。
- 貴方が認めたとおり、クローン病でも潰瘍性大腸炎でもないと?
- その通りです。
- しかし、本当はひどく深刻ではなかったとは言えませんか?組織学報告書に書かれていた以上に顔色が悪かったわけではないので、実はそれほどたいしたことではなかったのでは?
- いいえ。明らかに深刻です。本当に深刻だったと言えるのは、それに続いてサイモン・マーチの実施した作業があるからです。思うに、Journal of Pediatricsに発表されたラルフ・フルラノの記念論文では、光学顕微鏡で明らかな以上に重篤な免疫病理学について重要な原則を打ち立てています。…
実際、サイモン・マーチはこれを「微妙な腸疾患」と呼んでいると思います。私達はロイヤルフリーのスー・デービーズに小腸生検の解釈も教育しなければなりませんでした(彼女の報告書では問題の発見がなく、そのことがウェイクフィールドは病理報告書を改変して虚偽の腸疾患を記述したというディアの主張の基礎になった)。この件では小腸形態学の専門家であるアラン・フィリップスが大きな役割を果たしました。だから私はこれが何であれ新発見であること、新発見が出現したことには驚かなかったです。なぜなら私たちが診ているのは過去に研究したことのない子供のグループだったからです。
- 大きさは – 多分不正確な言葉だ、見つかった炎症の程度は症状の重さに比例していましたか?別の言い方をすれば、外傷を負った場合、陰窩炎や、陰窩膿瘍を患った場合、軽度のものより痛みと不快感が増すという関係性がありますか?
- いいえ。病状と臨床上の発見の間にそう単純な相関はありません。それに、生検で何をしていますか?これは郵便印をテニスコートから抜き取り、内視鏡で生体組織の小さなかけらを取り出し、それを組織学者に渡して顕微鏡で見るようなものです。内視鏡で重要なことは、例えば結腸の全体像を見ることができる、ということです。ある状況で、サイモン・マーチは結腸にリンパ濾胞がたくさんあるのを見たが、組織学検査ではそれがたまたまひとつも見つからなかった、ということがありました。それは、偶然彼がリンパ濾胞の見つかった部分から生体を採取しなかったからでした。だから組織のかけらと全体像を安易に結び付けてはならないのです。当然ながら、生検数が多ければ多いほど見つかる可能性も高くなります。
- 実際貴方が見たのは腸の病状の正常変異で、子供ならいずれかかるものだという意見についてはどうですか?だから実際には炎症の徴候ではなく、特にリンパ球過形成はただの通常変異で、臨床的に重要ではないと。私は臨床的重要性を強調します。
- 病状についてはポール・ディロン教授に依拠しています。傑出した組織病理学者で、Lancet論文の共著者のひとりです。私は彼のチームが実施した組織学検査については何の関係もなく分かりませんが、彼の意見では、顕著な病状があったとのことです。私の臨床医としての役割は、このような彼の判定した有意な組織病理学的知見を考慮することです。私は深刻なものと見なし、治療の必要があると判断しました。
リンパ球過形成に関して難しい部分は結腸ではなく回腸です。ディロン教授の見方と私の見方では、これはたとえ粘膜が組織学的に正常でも、見つかったものは明らかに異常である、ということです。回腸リンパ球過形成の重篤度の問題については、内視鏡検査を担当した同僚を頼りにしているので、彼らの意見に従いました。バリウム検査でリンパ球過形成の診断が出た場合には放射線専門医を頼りにしましたが、こういったケース以外で、リンパ球過形成の診断が出された時には、私はサイモン・マーチとマイク・トムソンの判断に従いました。
(連続的な照会について) - 連続的照会に関する告発を調査する、または反論しようとする場合には、学部の内視鏡検査と生検の記録をチェックして、照会された子供が全員最初の12人で、回腸・結腸鏡検査が必要と判断し、実際に回腸・結腸鏡検査を実施したかということに関して、事実を確認するしか方法はありません。そして、私達は子供全員の記録を見ました – むしろ私はマイク・トンプソンがやったほどはしませんでした。私はその時、GMCに報告されたという(ブライアン・ディアから、最初のSunday Timesの記事が出る前)脅しを受け、少しショック状態でしたが、彼は私に手を差し伸べ、私たちはその記録を通読しました …
- 主張は照会方法に関するものでした。文書を見ましたか?
- 方法について調べました。実際はトンプソン博士がやってくれました。彼は特定の場所を探して調べ、子供を一人ずつその記録を通読しました。副学部長がいつも歩き回って何が行われているか監視し、どう進めているか、何が関係しているか聞いてきたことを指摘しておかなければなりません。だから、ハンフリー・ホジソン教授もプロセス全体に深く関わっていたからです。
- その段階までに貴方は引退していて、学部にはいなかったのですか?
- 私は完全に引退していましたから、これは唐突でした。何の予告もなしに私は研究所に行かなければならず、この告発に反論しようとするもっともよい方法は、内視鏡検査と生検を受けた一連の子供について調べることでした。私は記録を通読して、自閉症と腸疾患を抱えていた子供についてメモを取り、その期間内に最初の12人の子供がLancet論文に掲載された12人の子供であることを確認できました。
- 貴方のメモを見せてもらえますか。 …
- 「ジョン・ウォーカースミス教授のメモ:1998年のLancet論文の子供の紹介パターンに体系的なバイアスがあったという主張を否認する。この研究のために紹介された子供はいなかった。小児科消化器科センター、ロイヤルフリー病院、「Biopsies Vi 4/9/95 to 21/7/97」と題する記録の点検で、1998年のLancet論文で報告された子供は大学の小児消化器病学部に連続して照会された12人の子供であることを確認した。彼らは自閉症と合併症を抱えていて、胃腸障害の症状があり、回腸・結腸鏡検査で慢性腸炎を排除する必要があった。」 …
(ウォーカースミスからの別の手紙から引用)「この学部に関しては、自己選択(親が選択した)患者群における回腸リンパ球過形成と非特異性結腸炎の新しい症状の記録について、我々は全員の意見が一致している。私達はLancetに論文を送り、そのコピーを貴方に送った。一部は明らかにMMRと病歴の連関がある。」
「アンディが準備していた別の論文では、はしかウィルスの証拠について書かれていた。これは、組織科学研究などのクローン病よりもずっと、ずっと強かった。自己免疫疾患の危険にさらされる可能性のあるこの少数の患者においては、はしかが役割を果たした可能性があると私は考えている。(この論文は発表されなかった。)」
「私も貴方と同じように、コミュニティでMMR接種が少なくなっていることを心配している。しかし、私は個人的に「自閉症の」子供達を見てきたし、少なくともその一部でMMRとのつながりを推論するに足る強力な証拠があるように思えた。」
- … その時点で、貴方は記載されていた条件の病原についてMMRが何らかの役割を果たした可能性があると懸念していたのですか?
- ええ。第2の論文には、はしかウィルスの実際のリスクと懸念がありました。思うにキャンディ教授が委員会で言った通り、彼は第2の論文を読み、アンディ・ウェイクフィールドの免疫病理学データに一部の子供の生体組織にはしかウィルスが生存し続けていることを示すものがあることに気付きました。私は、こうした知識を心の片隅において、この問題を議論するようにしたと考えています。なぜなら、はしかウィルスが病原に寄与した可能性が明らかであれば、私は免疫病理学的知見に照らしてあり得ない役割だと言ったでしょう。
- では、これは貴方個人の経験ではなく、科学的知見に基づくものなのですか?
- そうです。
- 親達から得た荒削りの疫学的証拠よりも?
- その通り。これはただの親達の回想ではなく客観的な証拠で、ウェイクフィールド博士はその年ハロゲートの英国消化器病学会にそのデータを掲載したので、英国の消化器病学コミュニティに広まり、何らかの利害が発生しました。このデータは、はしかウィルスが当該幼児の組織にいたということを証明するには不十分でしたが、はしかウィルスがいたことをほのめかす興味深い所見がありました。 …
- (1997年10月8日付けの文書を参照して)それは最初のLancet論文の最終版が公表された時に記載されていたことですか?
- そうです。
- 10月にこれが公表されてから、マーチ教授は、特に共著者の病理学者による組織学スライドのThe Lancet 12を検証を行い、論文草稿の病理学的記述内容の正確性を納得できるようにすべきであると貴方が提案したことを思い出しましたよね?
- 覚えていません。
- 共著者の病理学者はThe Lancetでの組織学に関する文言や記述内容に同意していたか覚えていますか?
- はい。
- その出来事はどのように覚えていますか?あなたがお答になる前に、マーチ教授が思い出したからこそ、先ほど私の言った会議でそうしたコンセンサスが取れたということを明確にしておきます。このコンセンサスはどのようにできたのか覚えていますか?
- それは可能ですが、ある時点でポール・ディロンと偶然会って、非公式に情報を交換したことを覚えています。残念ながら、具体的なことについては何も覚えていませんが、ディロン教授がその論文に書いた内容は正確であると私は確信しています。
ダン・オルムステッドはAgeOfAutism.comの編集者で、マーク・ブラクシルとともに「The Age of Autism – Mercury, Medicine, and a Man-made Epidemic」(ペーパーバック、Thomas Dunne Books、2011年)の共著者である。