先天性がまた覆された -自閉症の研究が遺伝的関連を否定-
自閉症スペクトラム障害(ASD)は比較的軽度のアスペルガー症候群(軽度の社会的障害と言語機能障害が特徴)から本格的な自閉症(重度の社会的・コミュニケーション障害、好奇心の狭さ、反復動作が特徴)まで様々な症状を含んでいる。
ASDは比較的よく見られ、米国では男子で54人に1人が罹っていると推定されている。(女子の感染率は顕著に低く、罹患者は252人に1人である)。遺伝子がこうした疾患に影響を及ぼしているのは確かだが、実際どう作用しているかは完全に理解されておらず、今回のリチャード・アニー(ダブリンのトリニティ・カレッジ)とバーニー・デブリン(ピッツバーグ大学医学部)が主導した最新の研究は、長く研究されてきたこの論点についてさらに進めたものである。
自閉症ゲノムプロジェクト(AGP)と名付けられた今回の研究は、2段階に分けて実施された。第1段階では、自閉症を患った1400家族の遺伝子データを用いて、ゲノム規模で関連性を調査した第2段階では、第1段階で発見された関連性を、ASDを患った別の1301家族の遺伝子データを加えてチェックしていき、さらに両段階の調査対象を結び付ける新たなゲノム規模の関連性を追加した。
分析がすべて完了した時点で、ASDと有意に関連するSNP(一般的な遺伝子変異)はなかった。さらに、第1段階の調査でASDとの関連の可能性が発見されたSNPの一部を第2段階の家族でチェックしたところ、その関連性はすべて否定された。
ASDと関連性のある一般的なSNPがないことは、失望であるとともに得るものが多い結果となった。
何が真実でないかを知ることは、逆説的に、何が真実であるかを知ることでもある。例えば、私がペットのタイガーは犬ではないと言えば、タイガーは猫である、という事実に一歩近づくわけだ。科学のほとんどは「真実でないこと」から進展していった — 仮説が否定されることで正しい理解に近づくのだ。こうした形の科学的進展を完璧に例示するのが、今回の遺伝子研究だ。発見されなかったことは大きな発見である。
23andMeでは、確たる結果が得られなかったため、自閉症スペクトラム障害の危険性に影響を与える遺伝子的要因について報告がなかったが、我々はその他の条件について報告を行っている。我々の23andMe disease reportsをチェックしてほしい。
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このような大規模な研究でASDに関連するSNPが見つからなかったという事実は、一般的なSNP単独での影響力は極めて小さいことを示唆している。すべてのSNPを同時に使用して被験者がASDに罹患するか予測してみても、このモデルではASDに罹患するリスクの差は1%にも満たなかった。
一般的なSNPがASDを予測するのに大した効果がないといっても、遺伝子は重要でないという意味にはならない。双子の研究ではASDは中程度に遺伝性があることが示唆されており、遺伝子が何らかの役割を果たしていることが伺われる。今回の研究で発見できなかったということは、一般的な遺伝子変異は、まれに起こる突然変異やコピー数(所定の遺伝子のコピー数)変異よりもASDリスクにおける役割が小さいという考えを支持するものだ。それゆえ、今回ASDの関連性がなかったということは、今後の発見に一歩近づいたということであってほしいものだ。