自閉症 発達障害

自閉症や発達障害について

キレーションは自閉症に有効な治療 医学論文

この研究はいくつかの理由で実に興味深い。まず気付いたのは、DMSAによって多量の必須ミネラルが体の外に流出しない、ということだ。第二に、DMSAを1回やることで体のグルタチオンレベルが正常化される!そして3つ目は、DMSAによるキレートは明らかに自閉症の子供にプラスの効果がたくさんあることだ。

ひとつ気付いたのだが、子供は全員鉛濃度が高いように見える。キレート療法を始めると、子供達は水銀よりもずっと多く鉛を排泄するようになる。今では、自閉症は第一に鉛中毒、第二に水銀中毒なのではと考えている。

さらに、DMSAは安全で効果があり、人体から必須栄養素を欠乏させることがないことも明らかだ。

しかも、これはカットラー規約に非常に近いものに準拠しているようだ!

DMSA治療研究の結果

James Adams, Liz Geis, Matthew Baral, Jessica Mitchell, Julie Ingram, Andrea Hensley, Sanford Newmark, Eva Gehn, Bob Rubin, Warren Tripp, Ken Mitchell, Jeff Bradstreet, Jane El-Dahr

サウスウェスト自然療法カレッジ

ウォレス財団および自閉症研究所の研究費支援

現在の研究

目標: DMSA/グルタチオン療法が自閉症の子供の治療に役立つかどうか判断する。

第1段階: DMSAを3日間以上、9回投与。投与量は10 mg/kg。ベースライン時、初回投与後、および9回目投与後に尿を採取。「グルタチオン」を毎日投与。

- 有害金属の排泄が多かった場合、第2段階に進む。

第2段階

3ヶ月間、二重盲・1回の治療法対照実験

3日間DMSAを投与、11日間無投与。これを6回繰り返す。

82名の子供が参加

65名が第1段階を終了

41名が第2段階を終了

第1段階

* 参加者82名で開始

* 1名は肝酵素値上昇のため不適格

* 4名は健康診断後中止

* 11名は初回採血後中止 (2名はベースライン時に採尿できず)

* 1名はDMSA後採尿したが研究所に送付せず (家族多忙のため)

* 65名がDMSA後採尿して検査のため研究所に送付

DMSA(初回目投与と9回目投与)後の有害金属排泄

変化の%・中央値 (N=63)

必須ミネラルの損失

カリウム:

初回投与 – RDAの27%を損失

9回目投与: RDAの12%を損失

ゆえに1日目はおそらくRDAの約75%を失い、2日目は約55%、3日目は約40%を失った。

3日間でバナナ7本分に等しいカリウムを損失。

ただし、3〜4週間後に血中濃度を測定すると通常だったので、長期的影響はない。

クロム: 初回投与 – RDAの45%を損失。9回目投与 – RDAの15%を損失。p=0.0005。そのためDMSAを数日投与すると数日間クロムを損失する。

必須ミネラルの損失 (続き)

モリブデン – 1日目に排泄量6%減少、9回目投与で30%減少。おそらく問題にはならない。

ナトリウム: 初回投与 – 排泄量30%増加、9回目投与で正常。問題にはならない。

銅および亜鉛: 排泄量増加、ただしRDAの1%未満

バナジウム – 損失は少量 (一日摂取量の1/3程度)

変化微小: カルシウム、リン、マグネシウム、硫黄、セレン

結論: DMSAでは、カリウムとクロムをある程度損失し、バナジウムは少量損失する。他のミネラルの排泄は微量である。

推奨: DMSAを採用する場合は、カリウムを摂るために果物・野菜を余分に摂取 (サプリメントは不可) し、クロムとバナジウムを摂るためにサプリメントを補給すること。

初回のグルタチオン: 31-1033 - 成人RRの427-714より大幅に低かったり高かったりする

最後のグルタチオン: 355-695 - ほぼ全員基準値以内

RBCグルタチオンが低い場合、DMSAを処置すると値が大きく上昇し、正常値に達した。

RBCグルタチオンが高い場合、DMSAを処置すると値が減少し正常値に近づいた。

一部のRBCグルタチオンが異常に低かったり高かったりするのはなぜか?

初回のグルタチオンはPb-9 (.25)、Sb-b (0.26)、Cd-9 (0.30)、Al-9 (0.29) に相関し、Hg-9 (-.27) と逆相関している。

仮説: 人体はPb, Sb, Cd, Alに対してはグルタチオンを増加させる反応をする。しかし水銀はグルタチオン生成をブロックするので、グルタチオンは減少する。

DMSAを1回投与するとなぜグルタチオンが正常に戻るのか?

* グルタチオンの変化はHg-9 (0.31) と相関し、W-9 (-0.45) とCd-9 (-0.47) と逆相関している。

* ゆえに、水銀を排除すると低いグルタチオン値が上昇し、タングステンとカドミウムを排除すると高いグルタチオン値が減少する。

DMSA 1回投与後の血液組成変化 (3~6週間後に計測、n=41)

主試験 – 大きな問題なし、腎機能改善の可能性

白血球 -3%

血小板数 -6%, p=0.02 (高12/42人、低1人。その後高6/42人、低0人)

リンパ球 -4%

カリウム +1%

ALT (肝酵素) +4%

AST (肝酵素) 0%

BUN/クレアチニン -6%, n.s. (高17/42人、低0人。その後高14/42人、低1/42人)

クレアチニン -2% (高0人、低8/42人。その後高0人、低9/42人)

その他の変化 (統計的に有意なものはなし)

好塩基性物質 +24%

ビリルビン -15%, n.s.

1回目については大きな安全上の問題は見出されず

血小板濃度改善 (炎症が少なくなる)

BUN/クレアチニンは高くなることが多い。クレアチニンが低く、BUNが高いため

第2段階への移行

* 8名の子供は有害金属排泄量が低いため継続許可が出なかった

* 1名の子供は鉛濃度が著しく高いため継続許可が出なかった

* 1家族は長期旅行で離れた

* 1家族は別の療法を試す意向を示した

* 1名の子供は尿路感染症治療により抗生物質の使用を増やすため中断

* 1家族は多忙を極めたため中止

* 1名の子供は採血を非常に怖がった

* 1名は個人治療を希望 (プラセボのリスクを回避)

* 1名は軽度の副作用を発症 (無気力、食欲増幅)

49名が第2段階に進んだ。

第2段階: 無作為・二重盲検プラセボ対照試験

* 2名は家庭の事情で脱退 (親が忙しい、親が死去した)

* 2名は改善が見られないので脱退

* 4名は行動上の問題で脱退

・ 軽度 – ほとんど眠れなくなったが疲労がない (DMSA側)

・ 中程度 – 行動悪化、興奮しやすい – (プラセボ側)

・ 中程度 – 行動悪化、退行– (プラセボ側)

・ ???? – 親がスキルの習得や退行を報告、実験前の2年間と似たパターンだが、ADOSスコアは改善 (DMSA側)

* 41名が実験をすべて完了、そのうち治療群の4名は第3回投与後排泄量が少なくなったので早めに終了

DMSAの有害金属尿中排泄に対する長期的効果

– 中央値の変化

治療群のみ (n=26)

長期的金属排泄量のまとめ

* 5名の子供については、DMSA療法は鉛排泄が著しく減少したため、治療は3~4回で終了した。

* DMSAを受けた子供のほとんど (19名) は、鉛排泄量がずっと高いレベルのままだった。

* 水銀、スズ、タリウムの排泄は中程度

* 銀の排泄量は最初減少し、その後増加した。

DMSA 7回投与後の血液組成の変化, n=21

大きな問題なし。血小板数改善。腎機能は異常なまま

血小板 -18%, p=0.05

(最初は高10人、低1人、それから高4人、低0人 – 改善!)

白血球 -7% n.s. (最初は高1人、低0人。その後高1人、低1人)

リンパ球 0%

カリウム +0%

ALT (肝酵素) +3% - 最初高1人、その後全員正常

AST (肝酵素) -6% - 全員正常

BUN/クレアチニン (腎臓) +8% - 最初高10人、その後高9人、低1人

統計的に有意な変化:

トリグリセリド: +47%, p=0.06 (傾向) – 最初高0人、その後高2人

その他の変化 (有意でない):

好酸球: -19%, p=0.08 高3人、その後高2人

好塩基性細胞 +50%, n.s. - 全員正常

アルカリ性ホスファターゼ + 12%, n.s. 全員正常、その後高5人 (成長期?)

DMSA 1回投与後、プラセボ7回投与後の血液組成変化

血小板: -13%, p=0.01 最初高1人、その後全員正常。治療後3~4ヶ月後に測定、そのため効果は長期的に持続

7回投与と同等 (-18%)

それ以外に有意な変化なし (長期的効果なし、安全)

血小板の回帰分析

血小板濃度の変化は部分的に説明できる (R2=0.41, p=0.02で調節)。主要素はタリウム (p=0.002), ヒ素 (p=0.01), カドミウム (p=0.03) の排出量、およびグルタチオン値の変化 (p=0.04) である。

自閉症状の評価

* 自閉症等級の厳密性

* ATEC – 親

* PDD-BI

* 全体的印象

研究で認められた専門家がADOSを実施した。

自閉症等級の厳密性

0~10点の等級

* 7回投与群: -18% (改善)

* 1回投与群: -18% (改善)

両群とも有意に改善した。

ATECの結果

等級

7回

1回

I. 発語・言語理解

-21%

-13%

II. 社会性

-27%

-25%

III. 知覚・認知能力

-27%

-26%

IV. 健康・身体・行動

-28%

-15%

ATEC合計

-26%

-19%

両群とも有意に改善した。

7回投与群は言語、身体的健康、およびATEC合計でより大きく向上したが、統計的に有意ではなかった。

広汎性発達障害の行動一覧 (PDD-BI)

両群とも有意な改善

全体的印象 - 結果

実験最終日の親による評価に基づく。

7段階の等級

3=とてもよくなった

2=よくなった

1=わずかによくなった

0=同じ

-1=わずかに悪化した

-2=悪化した

-3=著しく悪化した

親の全体的印象

親の印象- 全体

ADOS試験

* 自閉症診断観察尺度

* ADOS認可を受けた専門家による、1時間に渡る子供との標準化された対話に基づいて診断される

* 自閉症の重篤度を測るための「代表的な判断基準」の1つ

ADOSの結果

7回 1回

意思疎通 -9% -11%

社会的対話 -10% -2%

遊戯・創造性 -5% 0%

SBRI (固定型行動および制限的関心) -9% -2%

ADOSは他の指標よりも感度が低い (自閉症診断のために開発されたものであるが、変化を監視するためのものではない)。

全体として、7回投与群はやや改善の度合いが高いが、有意な差ではない。

自閉症評価のまとめ

両群ですべての尺度で有意な改善。

7回投与群はATECとADOSでわずかに改善の度合いが高かったが、統計的に有意ではなかった。

PDD-BI、SAS、全体的印象でも同様な改善点が見られた。

7回投与後もほとんどの子供は鉛排出量が多いため、鉛の排出を減少させるにはさらに長い治療が必要であることが示唆される。

疑問: 治療をさらに長くすれば行動面の改善が見られるか?

7回投与と1回投与でほとんど差がないのはなぜか?

仮説1: DMSAは自閉症の症状には効果がない (プラセボ効果)。

仮説2: DMSAの1回投与でグルタチオンが正規化され、血小板濃度が改善したので、それ以上処置しても追加の効果が小さかった。

行動改善と生化学的変化の相関から、仮説2が正しいことが示唆される。

7回投与群と1回投与群の自閉症重篤度の全体的変化

11%

12%

77%

5件の評価全体の平均

6%

8%

86%

親の全体的印象

22%

2%

75%

PDD-BI (修正版自閉症合成指標)

17%

15%

68%

ADOS (意思疎通 + 社会性)

6%

33%

61%

SAS

2%

2%

96%

ATEC

悪化の%

無変化の%

改善の%

回帰分析 – 自閉症重篤度

自閉症重篤度をグルタチオンおよび金属検査と比較する

R2調整 最も有意な金属

* ATEC: 0.22 p=0.003 Pb-9, Sb-b

* SAS: 0.36 p=0.002 Pb-b

* PDD-BI: 0.25 p= 0.004 Sb-9, W-b, Sn-9

* ADOS: 0.49 p=0.0003 Hg-b, Al-b, Hg-9

自閉症重篤度の4尺度はすべて重金属の排泄で部分的に説明できる。統計的有意性が非常に高い。

重篤な自閉症症例の22~49%は有害金属、特に鉛、アンチモンおよび水銀が原因と推測される。

回帰分析 – 改善

自閉症重篤度をグルタチオンおよび金属検査と比較する

R2調整 最も有意な金属

* ATEC: 0.44 p=0.006 Hg-9, As-9

* SAS: 0.57 p=0.002 Tl-9, Pb-9, グルタチオン値変化

* PDD-BI: 0.75 p=0.0006 Tl-9, As-9, グルタチオン値変化, Pb-9, Sb-9

* ADOS: 0.28 p=0.02 As-9, Al-9

4尺度すべての変化は、金属の尿中排泄量で部分的 (28~75%) に説明できる。

ヒ素、タリウム、鉛およびグルタチオン値の変化が最も重要

グルタチオン値が上昇すると、症状は全般的に減少する。

金属排泄量が増加すると、症状は全般的に減少する。

改善に対する年齢の効果

少し逆相関の傾向が見られることから、年齢の高い子供は低い子供よりやや改善する傾向が高いことが示唆される (有意ではない)。

試験における年齢との相関

ATEC -.20

SAS -.19

PDD-BI -.12

ADOS -.06

結論 - 利点

* DMSAは鉛の排泄量が大幅に増加し、スズ、水銀、タリウムの排泄量が少し増える。

* DMSAを1回投与すると1~2ヶ月間はグルタチオン濃度が劇的に正常化し、血小板濃度 (炎症のマーカー) も最低4ヶ月間正常化に寄与する。

結論 - 安全性

* DMSAはカリウムとクロムの排泄量を増加させる。そのためキレート治療の最中は野菜・果物の摂取を増やし、クロムの補助的摂取を少量する必要があると思われる。

* DMSAはその他の必須ミネラルに対しては影響が小さい。

* DMSAに肝酵素、腎機能、全血球計算値 に対する悪影響はない。

* DMSAはトリグリセリド濃度を上昇させる可能性がある – 注視する必要がある。

* システイン濃度をチェックすること。DMSAの90%は1-2システインと結合して排泄されるため。

結論 – 症状に対する効果

* 両群とも自閉症スコアが有意に改善した。

* 7回投与群はATECとADOSでわずかに改善の度合いが高かったが、有意ではなかった。

* グルタチオン値が低く、初回の金属排泄量が多かった人は改善度が高かった – 強い相関と回帰分析から、改善は本物であることが強く示唆される (プラセボ効果ではない)。

要点

有害金属 (特に鉛、アンチモンおよび水銀) で重篤な自閉症症例の22~49%は説明できる。

DMSAは有害金属を排除し、グルタチオン値を正常化し、血小板濃度・炎症を正常化できる安全な方法である。

グルタチオン値および金属排泄量と自閉症症状改善とに相関が見られることから、DMSAは自閉症の症状をある程度減少させたと考えられる。

ほとんどの子供で、鉛濃度の減少には長期的治療が必要だった – 長期治療で行動が改善されるかどうかは未知。

DMSAの二重盲検・プラセボ比較研究が必要である。

水銀その他の金属 (ヒ素、アンチモン) には、別のキレート剤が必要かもしれない。

さらに研究をするべきである!

疑問点

* DMSAでさらに長期に治療すればよりよい結果が得られるか?

・ おそらく得られるだろう。ただし調査が必要

* アンチモンの測定方法と除去方法は?

・ DMPS、ある程度のCa-EDTA

* 水銀の測定方法と除去方法は?

・ DMPSの課題、尿中ポルフィリン、その他

謝辞

* 研究に参加してくださった多くの子ども達と保護者の方々に

* 資金についてはARIとウォレス財団に

* 尿検査については医師のデータに

* RBCグルタチオン値と免疫検査については免疫学者に